ガレキから人へ。避難者と未来をつくる会

hitomirai.exblog.jp ブログトップ

増山麗奈より、「未来をつくるフォーラム」開催に寄せる思い

懐かしくて新しい未来を、つくろう。

(増山麗奈・画家 関東から関西に避難)


e0284270_12174432.jpg

東京の経済産業省前テントの前で、「愛を食べさせたい」という絵を書き下ろしました。


 私は去年の3月13日に長年住んだ東京から、10歳と6歳の娘を連れ、関西への新幹線に乗り、避難してきました。3月15日の放射性プルームより2日前に電車に飛び回った事で、初期被曝をずいぶんと押さえる事が出来ました。なぜそんなに早く決断したのかというと、7年前から戦場での被ばくによる健康被害、原発事故の対応策を少しずつ勉強していたからです。

 劣化ウラン弾の被曝の影響で出産異常や原因不明ガン、白血病が多発しているイラクに行ってから次女を産んだことで、もうこれ以上被ばくのリスクを避けたいという思いが強くありました。

 劣化ウラン弾とは細かいウラン238の粉塵を周囲に飛び散らせる爆弾で、沖縄からイラクへと飛んだ米軍が空爆しました。薬もない不衛生な病院で、白血病の治療をする痩せたイラクの子どもたちに出会ったことも強い記憶として残っています。罪の無い子どもたちが、テレビが報じない所で、ものすごく不条理な目に遭わされている事を知り、強い憤りを感じました。私のパートナーは7回イラクの戦場取材をしているジャーナリストです。湾岸戦争時劣化ウラン弾で内部被爆した後、帰還米軍の子どもに67%の高い確率で、手や目の障がいがあります。だから次女を妊娠したときから、将来なんらかの健康被害が娘に出るのではないかと恐れていました。多くのイラクのお母さんは障害があるかもしれないという思いで子どもたちを産んでおり、その命を愛しているのだと知りました。自分もどんな子どもが産まれてもしっかりと愛そう。精一杯娘達を守ろうと決心しました。イラクに行った被爆二世の方がイラク帰りの一年後に白血病を発症した事も聞きました。偶然や様々な個人差があるにせよ、被ばくの被害とは蓄積であることも理解しました。

e0284270_12135925.jpg

2009年 増山麗奈作「ノーベル賞タダであげると思うなよ〜本当の核無き世界〜」

 だから出来るならば子どもたちに少しでも被ばくさせたくないし、「直ちに人体に影響が無い」と連呼するテレビをそのまま信じる事は出来ませんでした。

関西に引っ越してきてからというもの、とにかく私は子どもを守る事に精一杯でした。日々のご飯、米、小麦粉、野菜など安全な産地のものを選びなるべく自炊をし、給食の放射能測定器を導入してもらい、それでも安心出来ないので毎日お弁当をつくりました。
 収入がないと生きていけないのでがむしゃらに絵を描いて、文章を書きました。もう原発や核を使う人たちに一ミリも協力したくなかったので、原発のない未来の絵を描き、除染やガレキ問題を福島、北海道、沖縄などに取材に行き、地元や東京、福島のお母さん達と農林水産省や文科省を訪ね、子どもたちを守れと声を上げ、ガレキの問題を訴えてきました。(鹿島建設とガレキ全量処理の契約をしているにもかかわらず、北九州とも契約をした宮城県、それを許した環境省の違法性は厳しく追求せねばなりません。)

e0284270_12213963.jpg

2011年夏「いのちを守るお母さん全国ネットワーク」の仲間と農林水産省に行き、お米の安全な流通に対する申し入れをしました。

 残念ながら政府の対応は、ガレキや汚染された食糧、肥料などを全国拡散し、これから顕在化してくる健康被害を薄く、広くしてごまかそうとしているように見えます。ガレキを拡散している細野大臣の環境省では、今各地の化学物質と健康との影響を測る大規模な調査を行っています。国家を上げた壮大なモルモット作戦の中に私たちは生きています。

 だれが、何故、何の目的でそんな残酷な事を実行しているのか。その答えは福島を取り巻く医療状況を見ていれば理解出来ます。通常の48倍、全体の三割以上の子どもたちの甲状腺にしこりや嚢胞を見つけても「健康に影響が無い」と断言し、全国の医療機関に「(福島県のこどもたちの甲状腺異常の)追加治療を拒否しろ」と勧告を出した山下俊一(日本甲状腺学会会長・福島県立医科大学学長)は、原爆が落とされた長崎の出身です。長崎や広島で被爆者達の治療をせず健康データーを保管、蓄積、アメリカに提供してきた米軍の医療部隊ABCCは放影研と名を変え、福島県立医科大学と業務提携を昨年の夏締結しました。広島から福島へ兵器からエネルギーへと名目上の形を変えて、核占領は続いているのです。その長年の構造を理解し、この不条理な世界を変え、本気でこどもたちと未来を守っていくために、全ての人たちは立ち上がらなければならない、と私は思っています。

 
e0284270_1235481.jpg

福島県立医科大学とABCCとの相関図。2011年「紙の爆弾」(鹿砦社刊)に掲載したもの

 東北や首都圏に住みつづけるという事、汚染された食品を食べ続けるという事は67年前から続いている人体実験に参加する事を意味します。こんな愚かな事を止めさせるには、やはりまず多くの人にこの事実を理解してもらい、汚染地から非汚染地に移住し、きれいな水、奇麗な食べ物を摂取し、生きるしか命をつなぎ止める事は出来ないということを知ってもらわなければならない。

 被曝は甲状腺癌だけではなく、多くの症状を発症します。初期症状の多くは鼻血、下痢、喉の痛みです。その後免疫力体力低下、集中力低下、記憶力低下、やる気の減退、白血病、心筋梗塞、くも膜下出血、糖尿病、さまざまなガンを引き起こす可能性があります。これから出産可能な人たちには出産時の遺伝子異常を引き起こす可能性があります。東京と同じ程度の汚染と見られるウクライナのキエフでは25年後の今健康で産まれる子どもの数が2割に満たないのです。それらの影響は時間がたてはなくなる訳ではありません。イラクやチェルノブイリを見ても年々さまざまな病気が増えていく、健康である人の数が減っていきます。今回来日していただくジーデントップフ医師はチェルノブイリの影響を20年間診療し続けた医師です。パターソン医師はアメリカで核実験の影響を話してくださいます。心筋に異変を持つチェルノブイリ事故後の子どもたちを撮影した「チェルノブイリ・ハート」の上映、マリアン・デレオ監督のトークもあります。ニューヨーク在住の川井和子氏、ガレキ問題ジャーナリスト青木泰氏の働きによって実現した今回のシンポジウムを最大限活用させていただき、と過去に学び、私たちが今関西で出来る事を考えましょう。

e0284270_12461362.jpg

核実験時、イラク、チェルノブイリと今回の福島の健康被害比較・予測。増山麗奈作成 「紙の爆弾」鹿砦社に掲載したもの


 避難してまだ一年と少ししかたっていないのに、コープ自然派ぴゅあおおさかの黒河内繁美さんをはじめ、関西のすばらしい仲間と繋がってこのような企画を行えることに感謝します。

 現在非汚染地は本当に貴重です。静岡の山脈がプルームを遮ってくれたことにより、関西は奇跡的に初期の汚染を逃れる事が出来ました。一万ベクレル/平方キロメートル以上の汚染があちこちに見られる(放射能濃縮は25万bqが東京東葛地域で見つかった)関東に比べ、関西の土壌汚染はND、もしくは数十ベクレルと本当に少ないのです。関西に来て、健康被害がなくなった、軽減したという話もよく聞きます。

 多くの関西在住の方と接していると、いまいち福島第一原発事故は対岸の火事と考え、放射線の影響に関して無頓着だと感じます。ぼんやりしているうちに、ここも汚染されます。関西の人たちに本気で取り組んでほしいのは、安全な場所を死守し、ガレキよりも人を受け入れるという事です。さまざまな健康被害が顕在化し、東京が経済や文化の中心であり続けられなくなったとき、関西が踏ん張らなければ日本は立ち行かないでしょう。関西の方々は、その責任感と気合いを持たなければならないと思います。

e0284270_12501752.jpg

被曝は知能へも影響する。全米の学力テストの成績は、受験生の誕生年の核実験の量に比例している。(全米大学委員局調べ)人間と環境への低レベル放射能の脅威―福島原発放射能汚染を考えるために [単行本 あけび書房刊]より引

 避難してきた人、これから避難してくる人、ひょっとして関西から海外へ避難する人、そういうひとたちとネットワークを持ち、あたらしい社会の形を作っていく時期なのではないでしょうか。それは関西に居る先住民が避難者に対して一方的に支援をする、ということにとどまらず、全ての人にとってこの星を生き抜くための場所作りという意味をも持つのではないかと考えます。ぶっちゃけた話、食べ物による内部被曝は放射線を外から浴びる外部被曝に比べて何百倍も危険である事を考えると食べ物に無頓着で関西に暮らす人々は、関東に住む人々と同等以上の健康被害が出てくる可能性もあります。私たちは皆ヒバクシャです。大人も子どもも被ばくがどういう被害を身体、社会にもたらすかきっちり学び防御策をとる必要があります。

 被ばく国である日本が54基もの原発を受け入れた背景には、経済第一主義で、都会が栄える為にはどんなに地方にリスクを押し付けてもかまわないという、東京などの大都市中心のご都合主義がありました。子孫達に残す自然の恵より、目の前の小金に目がくらんだ大人達の醜い姿がありました。私たちは都会と田舎の新しいバランスを考え直し、ほどほどに儲けながら、地球をこれ以上汚さず、残された資源を大事にシェアする新しい未来を始めなければなりません。どうか皆さんの力を貸してください。

 避難者の中には故郷に居る親戚や家族と絶縁状態で避難しているケースや、引っ越し先の人たちとも旨く繋がりができていないケースも多いです。家族がバラバラになって避難して、お母さんがその細い腕で先の見えない経済的、健康など幾重もの不安を感じています。本来は家族や自分たちの命を守る為に当然の行為である避難が、あたかもネガティブなものだというようなメディアや政府のイメージ付けで、避難者は精神的にも追い詰められています。

 この「未来をつくるフォーラム」開催を通じ、「避難ってかっこいい」というイメージの向上をしたいです。(むしろ今までの生活を惰性で変えられない人たちの方が、失礼な言い方かもしれないけれど現実を直視する事から“逃げている”と私には思えます。) この機会を通じて、「避難者と未来をつくる会」を広く関西全域の方々と協力して作り、避難者がいつまでも避難者として地域から特別扱いされるのではなく、出来たら普通の住民として新天地の地元の方と協力して穏やかに暮らしていくための準備、サポートをしたい。

 先日東京から避難してきたある母親は、2歳の子を抱えながら甲状腺癌になり入院・闘病生活を送っているそうです。子どもさんの世話や食事をボランティアの方々に頼っているようですが、ボランティアの方々の時間やお金にも限界がありその関係もそろそろ限界であると悩み相談を受けました。各地で同じ事が起こっているのではないか、個人努力では限界があるのではないかと思い、住居、仕事、体を壊した時の行政サービスなども求めて活動していきたいと思います。それは同時に過疎化した地方が活性化し、シャッター街となった町に子どもの声が響き渡り、関西から農業、文化、経済などが活性化していくことにも繋がるのではないかと思うのです。

 また本当に必要な医療の世界が思った以上に核は安全という洗脳から抜け出せていない現実があります。心ある医師に立ち上がってほしいと願っています。

 どうかこの会にあなたの周りの多くの医師を誘ってください。シンポジウムの記録はDVDにもする予定です。当日来れなかった医師の方々にも手渡し、少しずつお医者さん達の意識を向上させていくことが必要だと思います。

10年間東京に住んでいた私ですが、自然の豊かな神戸市北区で人の繋がりに恵まれ、自然の豊かな神戸市北区でちょっぴり野菜を作ったり、子どもたちが外で思いっきり遊ぶ姿を見て、じんわりと内側から感じる感謝・幸せを感じています。「未来を作るフォーラム」開催、「避難者と未来をつくる会」を通じて、皆さんと一緒に懐かしくて新しい未来を作っていけたら幸いです。

 会場では当日お客さんとして参加していただく他、双方向での情報発信のためのブースも募集しています。京都、大阪、兵庫、和歌山、奈良、さまざまな地域が横で繋がるきっかけになったらうれしいです。

 では、夏休み最後の金曜日、是非ドーンセンターでお会いしましょう。

長崎原爆投下67年目の日に
 避難者と未来をつくる会 共同代表              増山麗奈 
e0284270_127386.jpg

2011年 増山麗奈作「懐かしくて新しい若狭」個人蔵
[PR]
by garekikarahito | 2012-08-30 12:27
line

8月31日大阪のドームセンターで行われる「未来をつくるフォーラム」開催をきっかけに「避難者と未来をつくる会」発足。住宅・雇用など避難者支援のいろいろな情報発信、非汚染地帯をガレキから守る。


by garekikarahito
line
クリエイティビティを刺激するポータル homepage.excite